「シンジくんは今まで一度も私の乳首を舐めたことがない」と彼女が言った

「シンジくんは今まで一度も私の乳首を舐めたことがない」


と、ある晩彼女がぽつりと自分に言った。「どこ舐めてほしい?んん?乳首やろ?」といつものようにノリノリで彼女に尋ねながらブラジャーのホックを外そうとした矢先のことだ。ん?自分はその一言でピタッと固まった。何を言ってるんだこいつは?今までに少なくとも4万回は彼女の乳首を舐めているはずだ。チョコレートだったらエラいことになっている。もしそれが彼女の乳首じゃないとすると俺は今まで一体誰の乳首を舐めていたんだ。とんち?もしかして俺、屏風の中の虎を捕まえろみたいなとんち合戦をしかけられてる?となると俺が返す言葉は、、「ならば私がしっかりと乳首を舐めるのであなたはこの屏風の中から乳首を出してください。」でオッケー?



「シンジくんはブラジャー外してからやることがいつも一緒」

「シンジくんはわたしの身体をなにかどうでもいいものを扱うかのように扱っている」

「シンジくんのその舐める感じで舌が入ってきて途中で舐めるのを止めるモーションはバレバレだし、これが興奮するんやろみたいなのが伝わってくるからまったく興奮しない」

「シンジくんは技が多すぎる。これとこれとこれやっておけばいいんやろというのが透けてみえる。今までのストックを全部捨ててとまでは言わないけど脇に置いといて」


突然のタイミングで彼女の怒涛のエグりが始まった。自分は混乱して一瞬キョトンとなった。すべてが俺のいたらなさを的確に突いていた。たしかに自分のなかでセックスはルーティン作業になっていた。これから俺は死ぬまでにあと何回セックスできるんだろう?一回一回のセックスを大事にしたいと頭では思っていても身体が言うことを聞いてくれない。自分は悲しいぐらい大人になってしまっていた。ナンパでは同じ女を相手にすることは少ないため、自分の無意識の癖、ルーティンが見破られることはほとんどない。いや、もしかしたらあったのかもしれないが指摘されたことはなかった。ナンパというのはそういうものだ。彼女は、一体何者なんだろうか。古より代々伝わる性稼業の継承者?俺のチンポはノックアウト寸前だった。


「乳首を舐めるというのは余計なことをしないということだよ。。まずは、、」


彼女はゆっくりと息を吐いてブラジャーを外したあと、こう言った。




「じっくりと私の乳首を見て」




彼女の裸体がゆっくりと目の前に広がっていった。蛍光灯の下、体全体がなめらかに輝いていた。そうして俺は彼女の乳首をまじまじと眺めた。上半身、二つの隆起の先にまるでもう長い間ずっとそこにいたかのような体でこのオシャレでシワシワの突起物はそこに存在していた。こんなふうに乳首をとらえたのは初めてだった。隆起の周りにはたくさんの斑点が群をなし、グラデーションを描きながら周辺に広がっていた。そうか、、乳首ってこんなふうになっていたんだ、、と今さらながらそう思った。彼女の裸体は美しい。でも今まで俺は何を見て美しいと感じていたんだろう?


「考えないで。私の乳首どう?」


考えないで、と言われて一瞬イラッとした。こいつはいつもいつも俺を馬鹿にしやがって。こっちも好きで考えてるわけじゃないんだよ。脳が自動で操縦されるんだ。この不都合がお前にわかるのか。俺はお前にみたいに感覚主導の人間じゃないの。それにロジックだって悪くない。ロジックはな、突き詰めると途方もないぐらいすごいところに到達することもできるんだぞ。はあ、死にたい。
「また分析している。目を見たら一発でわかる。」そう言われるたびにいつも自分は自分の世界から彼女との空間に戻ってくる。いつもいつも呼び戻される。そうして不満そうな彼女の顔が立ち現れる。ただいま。今回もまた俺は今まで見た乳首をぐーーっと思い出し、眼前にある乳首との比較をしようとしていたようだ。でも、、乳首どう?っていう質問おかしくない?海外行った時、How are you doing? とやたらめったら尋ねられて、ああああああもううるせえええええ!!!となったことを思い出したぞ。ファインセンキューぐらいわかるよバカヤロー。そして帰国したとき俺は見事に周りに「最近どうよ?」と尋ねまわるイタい人間になっていた。最近乳首どうよ?どうなのよ?


「どうしたい?」


どうしたい?と尋ねられて俺は地蔵になった。頭の中で「どうしたい?」の声が空虚に反響した。ナンパ師的正解なら知っている。「どうしてほしい?」だ。尋ねられたら尋ね返す。全部は彼女に返っていくようにする。でも今はたぶん違うと思う。正解がわからない。恋人的正解が。自分の下半身の疼きが急にリアルに感じられた。乳首をどうしたいとかじゃない。俺は射精がしたいんだ。でもここで衝動的にむしゃぶりついたらルーティン乙になってしまう。安易な男。彼女の軽蔑しきった顔が目に浮かんだ。もういっそのこと乳首はスルーしてしまおうか。マラソンの休憩地点でドリンクを一切スルーしてただひたすら走る男がいたらかっこいいじゃないか。一直線にゴールににむかう。いや、それだとエゴイスティックな男だ。俺は彼女の乳首をどうしたい?今までいろんな人に教わったテクニックが頭をよぎった。下乳のあの垂直になっている部分ぴったりまで舌でスクレイプしてピタリと止めるテクニック。親指と人差し指で乳首の奥をコリコリするテクニック。口腔全体で激しく吸いながら舌で乳首を転がすテクニック。両乳を噛みちぎった後に串刺しにして強火で3分塩コショウで味付けするテクニック。そのすべてが不正解のように思えた。ところで乳首はチク・ビで噛みちぎれるんじゃない。チ・クビでちぎれるんだ。知ってたか?どうやら俺はパンク寸前です。


10秒以上の空白の時間が二人の間に流れたように思う。俺の上半身はガチガチになっていた。正解とかそういう発想がいけないことはもちろん知っている。トランス、トランス、トランス、トランス。心の声で俺はつぶやいた。冷蔵庫の音と加湿器の音、遠くで聞こえる自動車の流れる音をバックにかすかな二人の呼吸音がそこにはあった。トランス、トランス、トランス、トランス。自分の性欲をどこかにしまった。そして改めてこの平べったい突起が視界に飛び込んできた。乳首が乳首でないもののように感じられ、それからさらにいくばくかの空白の時間が流れた。自分は喉が乾いていた。それから皮膚の表面の肌寒さをひしひしとあじわった。彼女の呼吸がこころなしか少し大きくなったように感じた。自分もより深い呼吸を意識した。ゆっくりと触れるか触れないかぐらいのタッチで自分は彼女の乳首に鼻を近づけてそっと匂いをかいでみた。彼女の身体がよじれた。それから自分の全神経をのせた人差し指の先で乳首の先端にそっと触れてみた。彼女はその全てを上から潤むような目で見つめていた。ほんの数十センチ先のところに彼女はいたが、自分には神様のような高みから見られているように感じられた。そうして触れた瞬間に彼女の身体に衝撃の波がぐわんと走った。と同時に自分にもその衝撃が伝わった。そこからはあまりにも単純で自然なことだった。自分はやりたいようにやっただけだ。初めて彼女の乳首を舐めた夜だった。



65点をもらった。



関連エントリー

・私はいかにしてナンパ中毒を克服して儀式としてのセックスに身を捧げるようになったか



あと関連のオススメ書籍↓


「絶望の時代」の希望の恋愛学
宮台 真司
KADOKAWA/中経出版
売り上げランキング: 8,604